「極めて近く、限りなく遠い世界に」

何かを示し合わせたわけではなかった。
それなのにもかかわらず、彼女とは波長があった。
物事の捉え方がそっくりだった。


それに気づいたとき、私は驚いた。また嬉しかった。
そして、強く惹かれた。


彼女には技量があった。
持っている者にしかない、気品と余裕が感じられた。
一方で、自己の破滅を感じさせる儚さがあった。


私は、知りたくなった。
何が彼女をその形にしたのか。
同じ道を歩いたはずがないのに、なぜここまで似ているのか。


彼女は私の期待に応えてくれた。
時間を忘れて、お互いの話をした。
私は未だかつて、ここまで苦無く、
人の話を聞けたことがあっただろうか。
そして、恐れずに話せたことがあっただろうか。


話の中で疑問は解消された。
その時に芽生えた感情は、
同じ世界が見えている人と、
ここから先は同じ道を進んでいきたい。
そう思った。



私はあなたの全てを奪おうなんて思っていない。
私の信じたあなたは、
あなたの考えを言葉にしているあなた。
あなたがあなたでいなくなったら、
それは私にとって無意味なんだよ。
だから、あなたの思ったことを大切にして。
私が欲しいのはそれなのだから。